薔薇の名前
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この書物は1990年1月に初版本が出ているが、わずか1年後の1991年1月の第11版を購入した。
ストーリーは映画化されており、ミステリー小説のベストテン第1位にもなった小説なのでご存知の方も多いと思う。
今考えればこの小説の舞台となった中世イタリアの状況は、いろいろな徴(しるし)に囲まれたいかがわしい世界であったことが読み取れる。
恐ろしい小説になっているがとにかく複雑で深みにはまって行く。複雑さは重層的で、何重にも原因と結果が組み合わさり、何が原因で何が結果か、読んでいるうちにわけがわからなくなる。そしてこれが世の中の真実だと、これでもかと念を押される。入れ子構造、同義反復、複雑さが一方的に増大するところに救いがなくなっていく。
現実の世界はまさにこのようになっていると、とにかく恐ろしい思いのする小説である。中世というよりも今この場所でこのようなことが現実に起こりうるというたぐいのミステリーである。このような混乱がイタリアからバルカンにかけての中世世界を覆っていたのであろうと思うととにかく不気味さを感じた。
また、その後映画も2回見たがやはり気味が悪い。しかし、書物で見たときよりなにか洗練されすっきりとした筋が見えた気がした。どうしてだろう。原作はもっともっと訳がわからなかったのに。
よくわからない先の見えないことほど不安が増幅されることはない。この小説を読むとあらためてそういった思いを新たにする。
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